2024年8月 《JA秋田グループ広報誌「かけはし」2024年8月号》
かけはし特集 令和6年度診療報酬改定について
JA秋田厚生連
1.令和6年度診療報酬改定について
診療報酬改定は、国が目指す医療の方向性や社会情勢を踏まえ「基本方針」を策定し、その施策に見合った診療点数の新設、削除、見直し等が2年に1度定期的に行われます。
今回の改定は、医療・介護・障害福祉の3つを同時に改定する6年に1度の「トリプル改定」であり、医療と介護の連携の必要性を強く認識した改定内容となっています。
診療報酬改定は、例年4月より施行されていましたが、今回の改定では6月施行へ変更となっています。これは、電子カルテ等の販売者や医療機関の診療報酬改定対応の負担軽減を図ることを目的に実施時期を遅くしています。
今回の改定では、基本方針(図1)のポイントとして次の4項目が挙げられます。①「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」(重点課題)、②「ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進」、③「安心・安全で質の高い医療の推進」、④効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」です。従来の働き方改革に加え、物価高騰に対する賃上げや医療人材確保等が重点課題として位置付けられ、追加されています。また、「医療DX(※1)」も加わり、ポスト2025年のあるべき医療・介護の提供体制を見据え、社会経済の新たな流れも取り込んだうえで、効果的・効率的で質の高い医療サービスの実現に向けた取組内容となっています。
※1 | 医療DX: | 医療分野においてデジタル技術を活用し、効率的な質の高い医療と介護の実現を目的として社会や生活の形を変えていくこと。 |
診療報酬改定率について
診療報酬改定では医療技術の評価や診療項目、薬価などで改定率を用い診療報酬の増減を示します。
今回の改定率は技術料等を評価する診療報酬本体は+0.88%、薬価、材料等部分で▲0.99%、全体で▲0.11%となり、2014年から連続でのマイナス改定となりました。
また、診療報酬本体のうち0.61%が医療関係職種の賃上げ評価のため、実質本体部分のプラスは少なく、全体では大幅なマイナス改定となり、厚生連全体へ大きな影響を及ぼすことが見込まれます。(図2)
2.診療報酬改定の基本的視点
①現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進
医療人材の確保や賃上げに向けた取組
賃上げについては、医療分野では他の産業に追い付いていない状況にあり、また、人材確保の状況は悪化しています。さらに、長期的にも人口構造の変化により生産年齢人口の減少に伴う担い手不足が見込まれています。
こうしたことから、必要な処遇改善を図りながら、医療現場を支えている医療従事者の人材確保に向けた取組をさらに進めることが急務となっています。
各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング等やチーム医療の推進
医療の安全や地域医療の確保に向けて、引き続きタスク・シフティング等やチーム医療の推進について、実効性のある取組が必要となります。
②ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
マイナ保険証や電子処方箋等、医療DXの普及を推進し、外来・入院・在宅を含めた地域全体での医療機能の分化・強化、連携を着実に進めることが重要となります。
生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取組
2025年以降も人口減少・高齢化が進む中、患者の状態に応じた質の高い医療が受けられるよう、介護サービス等と連携しつつ、地域一体となった切れ目のない医療提供体制の確保が必要となります。
③安心・安全で質の高い医療の推進
物価高騰、医療技術の進展や疾病構造等の変化を踏まえ、客観的な評価を進めながら、イノベーションを推進し、必要な質の高い医療の提供や新たなニーズにも対応できる医療の実現に資する取組が重要となります。
④効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
高齢化や医療技術の進歩、高額な医薬品等により医療費が増大していくことが見込まれる中、医療保険制度を維持するため、効率化・適正化を図り、制度の安定性・持続可能性を高める必要があります。
3.令和6年度診療報酬改定トピックス
医療情報取得加算について
医療DXを推進する中で、令和6年度診療報酬改定では、既存の医療情報・システム基盤整備体制充実加算が「医療情報取得加算」へ名称が変更となりました。
診療情報等の活用に係る評価
オンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されたことを踏まえて、体制整備に係る評価から、初診時等の診療情報・薬剤情報等の取得・活用に係る評価へと在り方が見直され、併せて診療報酬点数を算定することになります。(図3)
例えば「この患者さんにはAという薬が処方されている。今、Bという薬を処方しようと思ったが、併用に注意点があるので、別のB1という薬に変更しよう」といったように質の高い効果的・効率的な医療提供が可能になると期待されます。
診療情報等の活用に向けて
秋田県厚生連では、診察室等で診療情報の活用ができるようシステム環境の整備を進めています。この仕組みを活用するためには、患者さん自身によるマイナ保険証の提示と同意が必要となります。
マイナ保険証を活用しましょう
令和6年12月2日以降、新規に保険証は発行されません。医療機関を受診する際は、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録する必要がありますので、ご協力下さい。
この他にも、多くの診療報酬改定が実施されておりますが、各種基準を遵守し、患者さんへの安心・安全な医療の提供に努めてまいりますので、ご理解・ご協力をよろしくお願い致します。
秋田県農村医学会第126回学術大会
学術研究を通して地域医療・保健・福祉を考える
一般財団法人秋田県農村医学会
7月6日、秋田県JAビルにおいて、秋田県農村医学会第126回学術大会(学術大会会長 吉田雄樹 かづの厚生病院院長)を開催しました。
学術大会には、秋田県厚生連の職員、県内医療関係者、一般会員等、約400名が参加し、医療・保健・福祉の質の向上を目的に、幅広い分野から研究発表が行われ、メイン会場の大ホールでは、研究班報告や特別講演、学会賞講演を行うとともに、43題の会員講演(一般演題)はメイン会場を含む4会場に分かれて実施されました。
共同研究班報告では、秋田厚生医療センターの戸嶋雅道診療部長から『秋田県のがん患者に対する強度変調放射線治療の提供機会創出に関する多施設共同研究』をテーマに講演していただきました。人的資源、物的資源、経済的資源、情報的資源などさまざまな角度からの調査および研究の報告をいただきました。
学会賞講演は2題行われ、湖東厚生病院の石井元診療部長から『90歳以上の超高齢者ERCPに関する検討』について、由利組合総合病院臨床検査科の加藤純副技師長から『当院発熱外来におけるSARS-CoV-2/Flu抗原定性検査の有用性に関する検討』について講演が行われました。
特別講演では、岩手医科大学の西川泰正講師から『詳説!脳深部刺激療法』をテーマに講演していただきました。会場はほぼ満席と盛況の中、脳深部刺激療法について、対象となる疾患や治療による効果を実際の患者さんの映像を交えながら分かりやすくご紹介いただき、「治療開始の遅れはその人の大切な時間と可能性を奪うことに他ならない!」と熱くご講演いただきました。また、質疑応答の際も活発に意見交換が行われ、会場の多くの方々が真剣に聞き入る姿勢に関心の高さを感じました。
最後に、学術大会にご参加いただいた全ての皆様に深く感謝を申し上げます。
マイナ保険証をご利用ください!!
能代厚生医療センター
国から示されたマイナンバーカードと健康保険証の一本化の方針に基づき、2024年12月2日で現行の保険証の発行が終了します。
当院ではマイナ保険証への一本化に向け、患者さんの利便性向上を図るために、マイナ保険証の読み取りに必要なカードリーダーを増設しました。
また、来春以降には国の施策としてマイナ保険証の機能がスマートフォンでも使えるようになる見込みです。
今後も医療分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じたサービスの効率化を実現するとともに、質の高い医療の提供に努めてまいります。
ぜひマイナ保険証をご利用ください。
マイナ保険証活用のメリット
1. | 医療保険の資格確認がスムーズにできます |
2. | 事前の手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除されます |
3. | データに基づくより良い医療を受けることができます |
4. | マイナポータルで確定申告時に医療費控除が簡単にできます |
5. | 健康保険証としての機能に加え、身分証明書としても利用可能です |