2020年5月 《JA秋田グループ広報誌「かけはし」2020年5月号》
令和2年度診療報酬改定について
JA秋田厚生連
1. 令和2年度診療報酬改定について
診療報酬改定は2年に一度定期的に行われるものです。国が目指す医療の方向性や社会情勢を鑑み、基本方針(図1)を策定し、その施策に見合った診療点数の新設、削除、見直し等が行われます。また、日々進歩する医療技術、医療機器及び薬品の適正な評価を図るために行われます。
今回の改定では、3つの柱となる改革を掲げているのが特徴です。①「2025年を見据えた地域医療構想の実現」、②「医師をはじめとした医療従事者の働き方改革の推進」、③「医師偏在対策の着実な推進」です。これら3つの改革を2025年までに着手し、2040年の医療提供体制を見据えた対応を整理することを示しています。これら3つの改革は、それぞれが密接に関連しており、特に医師の働き方改革については地域医療の機能分化・連携の強化等に重点を置く地域医療構想の実現が大きな鍵を握ると言われています。
最近の診療報酬改定率の推移は図2の通りです。今回の診療報酬改定率は技術料等を評価する診療報酬本体では +0.55%ですが、薬価、材料等部分で合わせて ▲1.01%となるため、全体では ▲0.46%となり、秋田県厚生連の医療収入に単純に当てはめると約3億円の収入減となることが推測されます。
2. 改定に当たっての基本認識
「健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた全世代型社会保障の実現」
○日本は、国民皆保険や優れた保健・医療システムの成果により、世界最高水準の平均寿命を達成し、人生100年時代を迎えようとしています。このような状況を踏まえ、意欲のある高齢者が役割を持ち、活躍できる社会の実現と「全世代型社会保障」の構築が課題となっています。
○日本の医療制度は、人口減少が進展する中で(図3)、地域医療の確保、少子化への対応といった多くの課題に直面しており、これらの課題に対応しながら、国民一人一人が安心・安全で効率的かつ効果的な質の高い医療を受けられる社会となることが必要不可欠です。
○そのためには、来る人口減少社会に備えた将来の医療体制の展望を見据え、長寿を実現しながら、国民にとって身近で分かりやすい医療の実現と、医師等の働き方改革を推進することが重要課題となっています。その際、医療技術の進歩や新薬の開発など医療費が増大していくことを見据えた効率化・適正化を進め、経済と財政との調和を図る観点も重要となります。
「患者・国民に身近な医療の実現」
○患者さんにとって身近で分かりやすい医療の実現のためには、可能な限り住み慣れた地域で、自立した日常生活を営むことができるよう、地域包括ケアシステムを構築することと、かかりつけ医機能や患者さんへの情報提供、相談・支援の充実が必要となります。
○疾病構造やニーズの変化・多様化、医療需要が増える中での働き手の減少、厳しい財政状況など、医療を取り巻く社会情勢を踏まえると、医療制度に関わる全ての関係者が、それぞれの担う役割を実現することが必要となります。
「どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進」
○2040年の医療提供体制の展望を見据え、地域医療構想の実現に向けた取組、実効性のある医師偏在対策、医師等の働き方改革を推進し、総合的な医療提供体制改革を実施していくことが求められています。
○その中で、医師等の働き方改革については、将来の医療ニーズの変化や現役世代の減少、医療技術の進歩等も踏まえつつ、医療の安全と地域医療の確保に十分留意しながら、医師等の負担軽減を図ることが重要となります。
「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」
○制度の安定性・持続可能性を確保しつつ、国民皆保険を維持するためには、国民各層の制度に対する納得感を高めることが不可欠であることに併せ、医療政策においても経済・財政との調和を図ることが重要になります。
○そのためには、保険料などの国民負担、物価・賃金の動向、医療機関の経営状況、保険財政や国の財政に係る状況等を踏まえ、無駄の排除、医療資源の効率的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図る必要があります。
3. 一般入院基本料の要件の厳格化
2016年度の診療報酬改定から国は、病床機能ごとの病床数の適正化を図ってきました。高度急性期、急性期、回復期、慢性期と病床機能は分類されますが、秋田県厚生連ではそれぞれの病院が各医療圏の中核病院であることから、急性期医療を担い、それに見合った看護体制、病床機能を維持するために整備等を進め、現在に至っています。その入院基本料の要件の中でも最も大きなウェートを占めるのが重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度という。)です。今回の改定においても、前回に引き続き更なる厳格化が図られることは予想していましたが、特に旧7対1入院料である急性期入院基本料1は評価Ⅰ・Ⅱともに基準の引き上げが行われました(図4)。この基準は、受け入れる患者さんの疾病・病態により、大きく左右されるため、日々の管理が重要となってきます。仮に基準を下回ることになった場合は大きな減収となります。そのため、医療従事者の確保と併せ、看護必要後の管理、維持は重要なポイントとなります。また、多種多様な疾病の受入れ体制を構築し、看護必要度の管理には秋田県厚生連各病院で適切な対応を行っています。今後も、各種基準を遵守し、患者さんに安心・安全な医療を提供するため、努力してまいりますので、ご理解、ご協力をよろしくお願い致します。
地域病院と連携し「地域住民講座」を開催
秋田厚生医療センター
2月15日、男鹿市民ふれあいプラザにおいて、「がんのことを知りましょう」と題し、地域住民講座を開催しました。当院では数年前から、地域に出向いて行う出前講座を毎年開催しています。今回は男鹿市にある男鹿みなと市民病院と共催して、初めて開催しました。地元病院の情報発信ネットワークを存分に発揮し、幅広く開催を周知することができたため、100人を超える地域の方々に足を運んでいただきました。
当日は当院の渡部診療部長を含む各科医師3名が、それぞれの専門分野ごとに「大腸がん」・「肺がん」・「膵臓がん」の予防や治療についての講話を行い、参加した皆さんは元気に過ごすための知識やヒントを一つでも多く得て帰ろうと真剣な表情で聞いていました。
最後に、全体を通して会場の皆さんの悩みや質問にお答えする時間を設け、参加者からは最新の治療方法・発見方法や食生活・生活習慣についての質問等が挙がり、終始和やかな雰囲気の住民講座となりました。
当院では、正しく病気を理解し、予防や早期発見・早期治療の意識を高めていただくため、地域住民の皆さんに正しい医療の情報を提供し続けるとともに、参加した皆さんが気軽に聞けて、質問しやすい雰囲気の講座開催を目指しています。今後も地域の病院と連携しながら、より多くの地域住民の皆さんに医療に関する情報を発信していきます。
新型コロナウイルス研修会
北秋田市民病院
2月21日、当院で新型コロナウイルス研修会が行われました。近隣の医師や北秋田市消防本部を含む行政の担当者も参加し、当院の小坂副師長が講師として講演しました。2月21日時点では日本の感染者数が100人を超え、ここから感染拡大が広まっていくだろうと予想されていた時期でした。
講演では感染者(疑い患者も含む)との接触を防ぐため、院内に「帰国者・接触者外来」を設置し、動線と診察室を分ける措置を講じたことを参加者と共有しました。2月21日時点の感染者(疑い)の要件が「発症14日以内に中国湖北省及び浙江省に渡航又は居住していたもの」であったこと、疑い患者が実際に来院した際の動線から診察、PCR検査および検査結果の確定後の流れについてパワーポイントを用いて発表しました。併せて室内での感染者との対面はゴーグル・ガウンなどの防護具を着用し、終了後は防護具を廃棄のうえ手指消毒を行ってから退室することも参加者と共有しました。
また、研修会では講演終了後も「看護職員以外の防護具脱着は訓練済みなのか」「肺炎像があるか確認するための画像診断はどのように行うのか」などの質疑応答を通して、情報・意見交換が行われました。
現在、テレビやネットで連日コロナウイルス関連のニュースが報じられています。終息に向けて私たちが行えることは感染を抑えるために不要不急の外出を控えることです。一日も早い終息を願うとともに、このコロナウイルスとの長い闘いを共に頑張っていきましょう。